あたり一面、冬のにおいがする。
早朝歩くと
生垣の葉も、道の隅に集まる枯れ葉の端も凍てついていた。
氷よりも冷たい空気が支配している。
いつの間にか、何の疑問も持たずに仕事に行って、終業すると真っ直ぐに家まで帰る。
家に帰った後は、明日を生きる準備をして寝床につく。
そのことを真正面から受け止めてしまうと、雁字搦めな空間にいる気がして
時々ひどく不安になる。
自分の人生を前に進めるために、期間を決めて今の仕事をしようと思ったのに
それだけになってしまっている事が焦りを生む。
やる気に満ち溢れ、頭の中でうまくいくような気がしている事は、たいてい実行できない事が多い。
このままでは目的も見失って、何がしたかったんだっけ、なんて考えがよぎるような気がしていることを、見て見ぬ振りして生きている。
あぁこんな後ろ向きな気持ちではいけないなって。
そんな、しょうもないことをコタツの中でゴロゴロしながらうだうだ考えている時、
くろちゃんがのそのそコタツから出てきて、ドサッと横たわって火照った体を冷やし始めた。
何となく
「今しあわせ?」
と問いかけて体を撫でてみると、自然に涙が出た。
猫達の運命を勝手に変えて、
友達や家族がいたかもしれないのに連れ出して
これが正しかったのかと何度も自問自答するけれど
外がひどく暑い日も寒い日も、気温調節された家の中でのんびり過ごす姿をみると
保護したことはきっと無駄じゃなかったと思える。
彼が外でどんな生活を送ってきたのか、私はほとんど知らない。
それでも、この貫禄や姿をみると、たくさんの修羅場をくぐり抜けてきた事はわかる。
私はこの子達のしあわせのために、頑張らなくちゃいけないんだと
守らなければならないのだと、しっかり認識する。
間違えだと思う日もあれば、これが最善だったんだと思う日もある。
人生はこれを繰り返し積み重ねたものなのかもしれない。
残された今年も、来たる来年も、猫達の毎日が少しでも幸せで満ちていてほしい。
きちんと自らを顧みて、未来に必要なことを
1日の中でほんの5分でもいい。コツコツ続けよう。
頑張るなんて当たり前。誰もが当たり前に努力して頑張っている。
それをしないのはただの怠慢だ。
そう言っていたあの人の言葉が、いつも胸に刺さっている。